譲れないものがある
どうしても譲れないもの
かけがえのないもの
誰にも渡さない
「・・・雨実さーん、どこですかー?
・・・雨実さー・・・」
当時同じ同好会に入っていたあたしと雨実さん。
雨実さんは、憧れで、いつもかっこよくて優しくて・・
初めてあったときから好きだった。
「ひ・・・」
その日部室へ雨実さんを探しにいったあたし。
部室へ近づく。
ガタッガタガタッ
「・・雨実さん?」
ガラッ
「・・ひっ」
あたしが目にしたのは血だらけの部長の姿。
「ぶっ・・・部長!?どうしたんですか!?」
「・・・こ・・・河野・・・」
「大丈夫ですか!?しっかりしてください!」
部長の頭から血が流れててあたしは、自分の制服で必死に抱きしめた。
「・・・河野・・逃げ・・・」
部長がそう言って、倒れる。
「部長・・?」
あたしは恐る恐る後ろへ振り向いた。
「・・・・う・・・雨実さん・・・・」
バッドを持った雨実さんがいた。
息ができなくて、声がでなくて
あたしは潤む目にうつるにごった雨実さんをただただ見ていた。
部長は一命をとりとめた。
雨実さんは、すぐ少年院におくられた。
今、どこで何をしているのかもわからない雨実さん。
彼は、なぜ・・・あんなことを・・・
プルルルルル・・・プルルルルル・・・
「はい、河野です」
『あ、もしもし愛羅!?』
「どうしたのりおちゃん・・・」
『雨実先輩が!もう少年院出てるらしいよ!』
「え・・・・ほんと!?」
『ほんとほんと!啓太が、街で見たって!』
雨実先輩が・・・
『・・もしもし!?もしもし愛羅・・おーい・・・』
ピッ
雨実先輩のことだから、何かあるんだ、しょうがない理由があったんだと
心に言い聞かせた。
でも、でも・・
「おはよう、愛羅ぁ。一限間に合わないよぉ?」
「あぁ、ごめーん・・」
「今日、K大と合コンなんだってぇ、ひっさしぶりにテンションあがっちゃーう」
「あ、そう・・・」
なんとなく憂鬱な3日間。
「ごめんりおちゃん・・・」
「ん?」
「あたし・・・行かない」
「えぇ〜〜!?」
「ごめんね」
りおちゃんと顔を合わせずに家へと歩き出す。
パタ・・・パタ・・・
「?」
後ろから人の気配がした。
歩くスピードを速くする。
パタ・・パタ・・パタ・・
タッタッタッタッ
嫌・・・
ついに走り出す。
ダッ
後ろでも走る音がする。
どうしよう。
こういう時って、家に帰ったほうがいいの!?
下手に家がバレても困るし・・
ガッ
!!!
ついに一番恐れていたことが起きた。
後ろからついてきていた人の手が、あたしの肩に・・・・
「・・・・」
恐怖で体が動かなかった。
「・・・随分怖がられちゃってんな。
変態じゃないよ?」
体の硬直が少しずつとけていく。
「・・・」
静かに後ろを振り向く。
「・・・う・・・」
「よ!」
「雨実先輩!!!???」
懐かしい声の雨実先輩。
前と変わらない笑顔の雨実先輩に涙があふれた。
「雨実先輩・・・」
「うお!!??どうした!?」
雨実先輩があたしの頬にふれる。
その瞬間、あたしの脳裏に浮かび上がる血まみれの部長。
あたしの肩がびくっと震えたのを、雨実先輩も感じた。
「・・・・愛羅・・・」
「ご・・・・ごめんなさい・・・」
「・・・いいよ。俺、犯罪者だもんな。」
「・・・」
そんな悲しいこと言わないで。
「公園、行こ。出てきてすぐ愛羅に言っておこうと思ってたことがあるんだ」
「・・?」
あたしは言われるままに雨実先輩についていく。
公園の噴水を眺めながら二人でベンチに座る。
「・・・」
「武田、元気?」
武田とは部長のこと。
「えと・・・・」
部長は、武田不動産を引き継いで、立派な社長になった。
なんとなく言いにくい。
「親父さんの会社継いだんだ」
「え・・・あ、はい・・」
「そっかぁ。よかったなー・・・」
「・・・」
「あの日・・・」
雨実先輩は独り言のように話し始めた。
「武田と、同好会のじゅんびしてたんだ・・・・」
『おい、雨実ー俺思うんだけどさぁ・・・』
『なに?』
『愛羅ちゃんって、俺のこと好きじゃね?』
『はぁ!?お前何言ってんの?』
『最近、よく目ぇ合っちゃうの。あの子子犬みたいなうるうるな目で俺のこと見てんだよ』
『お前・・・彼女いんじゃん、9人。』
『あ〜だから、愛羅ちゃんまでいれたら10人vキリがいい〜〜』
ダンッ
『ど、どうしたんだよ・・雨実・・・』
『ふざけんなっっ』
「気づいたら武田血まみれだった。」
「・・・・・その女の子って誰なんですか?」
雨実先輩は、一番大切なところを「あの子」でごまかしながら話した。
「それは・・・その子が傷つくから、言えないよ。」
「え・・・」
「ただ、愛羅には、俺がそんな理不尽なやつじゃないって言っておきたかっただけ」
「・・・」
「ま、半殺しにした時点で理不尽な人間なんだけどな。
愛羅だけには嫌われたくなかったから」
雨実先輩は立ち上がり、あたしを見た。
「じゃ、俺帰る」
「え・・・帰るってどこに?」
「・・・愛羅」
雨実先輩はあたしの言葉をさえぎるようにあたしを見た。
「先輩・・・」
「俺、愛羅のことずっと好きだったよ」
「え・・・」
愛しそうに頭をなでる雨実先輩。
あたたかくて、優しくて、涙が出た。
「せんぱっ・・・」
顔を上げると、そこには先輩はいなかった。
「先輩・・・?」
立ち上がって回りを見る。
どこにもいない・・・
どこにも・・・
『俺、愛羅のことずっと好きだったよ』
・・・・どうして?
―――『武田不動産』
「お〜久しぶりだね、愛羅ちゃん」
「あ、部長!」
部長主催の同好会同窓会。わかりにくい。
「みんな呼んだんだよ。
何せ人少なかったからな。」
「そうですねぇ・・・」
まわりを見る。
りおちゃんもいる。
「あの、部長・・・」
「ん?」
「やっぱり・・・・雨実先輩は呼んでない・・・ですよね・・・」
「え?」
部長の顔がにごった。
「あ!ごめんなさい!!・・・」
「いや・・・愛羅ちゃん・・・」
「はい?」
「雨実は・・・少年院に送られた3ヶ月後に・・・院内で・・・死んだけど・・・」
「え!?でもっ、あたし・・・」
「幻でも見たのかな?」
部長がからかうように頭をなでる。
ありえない。
だって、こないだ会った・・・
会ったんだよ・・・
『俺、愛羅のことずっと好きだったよ』
昨日のことのように思い出されるあの声は・・・何だったの?
放心状態で歩く。
ドンッ
「痛ってぇな!!」
「ごめんなさい・・・」
毎日、すぐ傍にいる感じがする。
『見てるよ』
「・・・?」
空には雲が
街には人が
何も何も変わらない日常。
日常に先輩がいないのなんて、
今も昔も変わらない
『愛羅・・・』
先輩の呼び方が大好きだった。
先輩のすべてが大好きだった。
「『誰にも渡さない・・・』」
長ぇよ!!!!!
そして
死オチかよ!!!!
最近、泣きたい話しか書けなくなって・・・
泣ける話じゃないよ?泣きたい話だよ?
悪魔で個人的にね・・